日常の一コマ


「あ〜あ、暇だなぁ。」
誰もいないキッチンでサンジは一人ぼやいた。
もう何日も海の上にいて、他の海賊に会うこともなければ海軍に会うこともなく平和な日々が続いていた。
平和であることはいいのだが退屈で仕方ない。
おやつの時間は過ぎているし晩飯の準備をするにはまだ早い。
晩飯の準備までに何かしようとキッチンを出た。
出るとすぐにルフィとウソップとチョッパーの三人が仲良さそうに遊んでいた。
ナミとロビンはそれぞれ本を読んでいて、たまに会話を交わしていた。
サンジはふと、そこにいない人物に気がついた。
どうせまた寝ているのだろうとその人物がいると思われる船尾へと向かった。
案の定、胡坐をかいて気持ち良さそうに眠っている人物を発見した。
からかってやろうとその人物に近づく。
しかしゾロは敏感なやつなので下手なことはできない。
どうしたものかとゾロの向かい側に立ちタバコを取り出すと口に銜えると火を点けた。
静寂の中にゾロの規則正しい寝息が聞こえる。
柔らかそうな淡い緑色の髪が風にそよいでいる。
その髪に触れたくなってしゃがんでやんわりと撫でてみた。
思ったとおり柔らかくほわほわしている。
「何のまねだ。」
その場に似合わない鋭い声が響いた。
「起きたのか?」
「触られて起きないわけないだろう。」
ゾロは身を捩って手を払い除けた。
「俺もそう思ったが気持ち良さそうだったんだよ。」
ゾロはどう反応すればいいのか困った顔をして、再び同じ姿勢に戻ると言った。
「お前がココに来るの珍しいな。」
サンジはいつもなら飯の支度でキッチンにいる。
それ以外ではルフィたちと一緒に遊ぶかナミやロビンのためにあれこれと忙しなく動いている。
だから滅多にゾロと二人きりになるなどということはないのだ。
「たまたまそういう気分だったんだよ。」
そういって深くタバコの煙を吸い込むと吐き出した。
「ストレスでも溜まってんのか?」
珍しい一言にサンジは驚いた顔をゾロに向けた。
「何だ、俺の心配をしてくれてんのか?気持ち悪いな。」
「あほか。お前が変だったからだ。」
それて心配してくれてるってことだろう?とサンジは思ったが声には出さなかった。
「俺は寝るんだから用がねぇならどっかいけ。」
ゾロはそう言うと寝る姿勢に入った。
「俺も寝よっかな。」
サンジはそう言うとゾロの横に座った。
「やっぱり変だ。寝るのはいいが横に来るな。別の場所にしろ。」
「いいだろ。気にすんな。」
そういって銜えていたタバコを海に投げ捨てるとすぐに目を瞑った。
ゾロも何だかその場を離れるには離れづらくなって仕方なく目を瞑った。
すぐに聞こえてきた寝息にサンジは嬉しそうに笑って自分も襲ってきた眠気に身を任せたのであった。



END

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