動物園 6
「んっ・・・。」
茅宥はゆっくりと目を覚ました。
茅宥の家の使い古した布団と違ってふかふかした肌触りがする。
さらには茅宥の家にはないはずの羽毛布団が掛かっている。
枕も別物だ。
うつ伏せになっている体を仰向けにしようと体を転がした。
その瞬間、あらぬところが痛んだ。
「いっ!?」
その痛みでうつろだった意識も完璧にはっきりとした。
そして自分が全裸であることに茅宥はようやく気がついた。
しかも体はだるく、まるで情事の後のような気だるさがある。
いつもと違うのはけつが痛いのである。
何も覚えがない茅宥はただ呆然とするばかりである。
「ここどこだ・・・?」
さらにはあたりを見渡すと見覚えのないところに自分がいる。
すると扉が開いて人が現れた。
「おはよう茅宥。気がついた?」
その人物とは都だった。
「あれ?都・・・あー!!」
茅宥は漸く都に誘われて一緒に飲んでいたことを思い出した。
「あれ?何でベッドに寝ているんだ?いつの間に寝てた?」
飲んだところまでの記憶しかない茅宥は困惑を隠せないでいる。
「ワインを飲んでからすぐに寝むってしまったからここに連れてきたんだ。」
都が入ってきた扉の向こうには見たことのある風景が広がっている。
そこは都に招待されたレストランだった。
ホテルの一室のようだと思ったけど本当にホテルの一室だったのだ。
扉があることに気づかなかったなんて・・・。
「あのさ・・・なんで俺全裸なの?もしかして吐いたとか?」
もし吐いたなんてことだったらすごく申し訳なかった。
「俺が脱がした。・・・セックスするために。」
「・・・!?はぁ!?」
都の返答はまさに思いがけなく衝撃的なものだった。
一瞬にして顔が青褪める。
「昨日あなたに告白したでしょう。」
「しかし、昨日は諦めるって・・・。」
都は困惑している知宥の近くによると言った。
「そんな簡単に諦められるわけないだろう。」
そしてベッドの脇に座ると茅宥の顎に手を掛けた。
そのまま親指で茅宥の唇をゆっくりなぞった。
その感触に茅宥は体の中で電撃のような寒気のようなものが走ったような気がした。
「もしかして俺が都に・・・?」
鈍感な茅宥は自分が男に組み敷かれることがあるということを微塵も思っていないようだ。
さらには男を犯したということにかなりのショックを受けているようだ。
「違うよ。」
その一言は茅宥の頭の中に鮮明に入ってきた。
「じゃあ・・・。」
男とはやっていないのではないかということに喜びの笑顔を向けた。
しかし次の都の言葉は一瞬にして茅宥を地に陥れた。
「俺が都にしたんだよ。」
怪しく艶やかに笑った。
開いた口が塞がらないとはこのことだろうか。
茅宥は一言も言葉を発することができなかった。
「いや、男同士でできるわけ・・・。」
男同士でセックスできることを知らない茅宥は最後まで抗った。
「できるよ。」
「どうやって・・・?」
自信満々な都にだんだんと冷や汗を流し始める茅宥。
「女の穴の代わりに尻の穴を使うんだ。」
「尻の穴!?」
尻の穴という言葉が茅宥の頭を駆け巡る。
「そういえば俺・・・ケツが痛い・・・。」
あまりの絶望にショックを通り越して怒りがふつふつと沸いてきた。
「何で俺がこんな目に遭わなきゃならないんだよ!!」
「だって無防備だったから。」
「ふざけんな!」
茅宥が怒鳴ると都は笑って言った。
「まぁね、ワインに薬仕込んでたから無防備になるのは当たり前だしね。」
「なっ!!このやろう!!」
茅宥は都に飛びかかろうとした。
だが引き裂かれるようなケツの痛みにベッドの上で蹲った。
「くそ!ケツがイテェ!!」
「ごめん茅宥。」
都は茅宥にそっと口付けた。
「!!」
「幸せにしてあげるからね。」
それから都は動物園に毎日のように甲斐甲斐しく通ったという・・・。
茅宥が都に落とされたかどうかは本人達しか知らない。
END
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NOVEL
06'4/3