動物園 5
「はぁ。」
何だか不思議な人だ。
「じゃなくて、調べたってどういう事だよ!?」
思わず席を立った。
ついでに机も叩いてしまったが都はビックリした様子もなかった。
「まぁ落ち着いて座って。」
そう促されて茅宥は再びソファに腰を下ろした。
「それで?」
少し冷静さを取り戻した茅宥は都に答えるように先を促した。
「まぁ、一目惚れってやつかな・・・。」
都は恥ずかしげもなく飄々と答えた。
「はぁ?誰が誰に?」
茅宥は恋愛ごとに疎く自分のことだとは少しも思っていないようだった。
むしろ思いたくないのかもしれない。
そんな茅宥に向かって女だったら腰砕けになりそうな笑顔を見せて指を指した。
「俺が茅宥に一目惚れ。」
ゆっくりと子供に聞かせるように説明をする。
一時的に茅宥の脳はフリーズした。
目の前にいる色っぽい男前な男は何を言っているのだろうかと理解できないでいる。
「茅宥?」
都からを声を掛けられてやっと都のいった言葉を理解した。
理解すると同時に頭から煙を吹きそうなほどに混乱した。
「ちょっと待て!一目惚れって『一目見て好きになる』ってことだよな!?」
「そういう意味だと思うけど。」
「あんた・・・ホモだったのか!?」
もしかして二丁目で働いてたり?などと考える。
都の女装姿を想像して似合わないことはないが気持ちが悪くなってきた。
「いや、ホモではないけど?」
「それじゃなんで?」
茅宥は疑問でいっぱいだ。
自分が周りから見て女の子っぽくないのは知ってるし、言われたこともない。
逆に友達から『男の中の男』というようなことを言われたことがある。
現在の仕事をずいぶん前からしているが、今でも友達から力仕事をしていると間違われるほどゴツイ。
どこをとっても男から惚れられる要素はないのだ。
オカマの人だったら考えられないこともないかもしれないが・・・。
都は少し考えて答えた。
「直感かな。」
そう言われて茅宥は脱力した。
ソファに凭れ掛かって深くため息を吐いた。
豪華なシャンデリアのある天井を見つめて呟いた。
「俺、男は好きになれねぇぞ。」
「・・・。」
都は静かに下を向いた。
「友達にならなってやる。」
茅宥がそういうと複雑そうに顔を上げ「分かった」と言った。
そして席を立つと奥の冷蔵庫からワインを持ってきた。
これまた高そうなものを・・・。
ワインを注いだグラスを茅宥に渡すと自分のグラスにも注ぎ無言で乾杯をした。
友達になったということの祝い酒だと茅宥は思って都のグラスに自分のグラスを傾けた。
都がワインを少しずつ飲み始めるとそれを見て茅宥もワインを味わって飲んだ。
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NOVEL
06'4/3