強い男 6
「俺がこのジーンズを脱がない限りあんたからは逃げられないってことだよな?」
こんな公の場所で脱げるわけがない。
脱いだら即、変態の仲間入りだ。
鉄馬は観念したようにフーッと溜め息を吐いた。
「じゃ俺が行きたいとこ、一緒に付いてきてくれるよね。」
もはや問掛けでなく確定だ。
鉄馬は嫌そうな顔をするが飛雄は気にしたようすはない。
「どこに行きたいんだよ?」
「とりあえず付いてきて。」
鉄馬の質問に答えず飛雄は鉄馬を誘導するように歩きだした。
鉄馬は大人しくその後に付いていく。
暫く歩いた先にあったのは細かな模様が施された扉のオシャレなお店だった。
どこか一般の人が入れそうもない雰囲気が醸し出されている。
「…ここは?」
看板も出ておらず一体何のお店なのか鉄馬には皆目検討がつかなかった。
「入ってみればわかるよ。」
飛雄は優しくそう言うと扉を押して開け中に入っていった。
その後に鉄馬は続く。
入ってすぐに目に飛込んできたのは正装をした男の人や女の人たちだった。
「いらっしゃいませ!」
飛雄が入っていくと正装した人達はかしこまったように挨拶をした。
「千羽様、本日はどのようなご用件で?」
初老の男性が飛雄に話し掛けた。
「今日はプライベートでね。この子に合う服を選んで欲しいんだ。」
「かしこまりました。」
丁寧に礼をすると男は鉄馬を見た。
「なるほど。良い体をしていらっしゃる。」
そう言うと懐から徐にメジャーを取り出した。
「失礼します」と言いながら、素早く鉄馬の体のサイズを測っていく。
「確認して参りますのでお寛ぎになってお待ちください。」
そう言ってソファに座らせるとどこかに消えていった。
すぐさま若い女がお茶を二人の前に出した。
飛雄の前に置くときだけ妙にチラチラと見るし上目遣いをする。
あからさまな態度だった。
こいつは変態ホモ野郎なのに・・・と哀れみを含んだ目で女を見た。
こんな奴、顔だけだぞと心の中で訴える。
しかし当然のように目の前にの女には届かなかった。
しばらくして初老の男が戻ってきた。
手にはいくつかの箱を持っていた。
その中身を一つ一つ丁寧に飛雄に見せている。
鉄馬は飛雄の肩越しからその物体を見た。
シンプルで上品なスーツの上着だった。
「おい。さっき俺のサイズ測らせてたよな?まさかそれ…」
「鉄馬くんのだよ。」
鉄馬が皆を言う前にさらりと言ってのけた。
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NOVEL
06'11/6→07'7/14