動物園 2
無事モン太のショーも終わり閉園時間となった。
園内には閉園を知らせるアナウンスが流れている。
茅宥は園内に人が残っていないかどうかを見回りしていた。
誰もいないはずの園内の食堂に一人の少女、いや少年がいた。
茅宥が少女と見間違えるほど可愛い顔をしていた。
身長も160cm前後といったところである。
しかしどこか男の子らしい雰囲気があったので男の子だと分かった。
その少年は茅宥が入ってきたのも分からないほどあせってテーブルの下やイスの下などを見ている。
落し物でもしたのであろうか?
「どうしたのですか?」
茅宥が尋ねるといきなり声をかけられて驚いたのだろうか。
ビクッと体を揺らして振り向いた。
茅宥が園の服を着ているのを見てホッとした顔をすると事情を話し始めた。
「今日彼女に上げようと思っていたペンダントを箱ごと落としてしまって・・・。」
落し物で届いていませんでしたか?と続けて言った。
こんな可愛い顔して彼女持ちとは・・・などと失礼な事を思いそんなこと考えてる場合じゃないと考え直し返事をした。
「えっと、管理室にあるかもしれませんので付いて来てもらえますか?」
少年は”はい”と言って頷くと茅宥の後に付いた。
管理室に向かう間にペンダントのことについていろいろと尋ねた。
今、彼女は園の出入り口に待っているらしく早く見つけてあげなくてはいけない。
失くしたのを気づいたのは彼女に渡そうとしたときだったらしい。
初デートだったらしくその大事な日に限って失くしものをしてしまったなんて少年にとって今日は最悪な日になったに違いない。
管理室に着いて調べてみたが見つからなかった。
しゅんとしている少年を見て自分のせいではないのに申し訳ない気持ちになった。
もう一度園内を見てみようと管理室を出ようとしていたときであった。
一人の男が現れた。
その男はモン太の部屋に戻るときに目が合った男前のやつだった。
「何かありました?」
茅宥が尋ねるとその男は長方形の箱を茅宥に手渡した。
「落し物。」
そう単調に言うとすぐに去って言った。
その長方形の箱は少年が落としたものであった。
少年は嬉しそうにそれを受け取ると茅宥に向かって「ありがとうございました」と言うと彼女の元に向かった。
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06'3/29