動物園 3


少年が帰った後茅宥は色々と片づけをして帰ろうとする頃にはすっかりと暗くなっていた。
大変疲れる仕事だがやりがいのある仕事だ。
動物が好きな茅宥にとって苦にならないことだった。
しかし、明日も朝が早い。
帰ってご飯を食べてお風呂に入ったらすぐに寝ようとそれだけしか頭になかった。
次の日。
いつものようにモン太のお世話をしていた。
ふと視線を感じてその方向を見ると、昨日の少年が落としてしまったペンダントを見つけて届けてくれた男が立っていた。
なんで見られているのか理由は分からないが、挨拶代わりにお辞儀をした。
すると男はこちらに向かって歩いてきた。
無言で目の前に立たれ動揺したが、何か話さなくてはと昨日のお礼を述べた。
「えっと・・・昨日は落し物を届けていただいてありがとうございました。」
そう言っている間も顔色一つ変えずにじっと見ている。
「あの・・何か?」
耐え切れなくなってそう尋ねた。
「あのさぁ、拾ってやったんだからお礼の一つでもしようとか思わないのか?」
やっと口を開いたと思ったら何様だよと言いたくなるような言い方だった。
その言い方にも驚いたがさらに驚いたのはこの男の声だった。
男前にぴったり合った低めの声だった。
茅宥もよく低くて良い声だと言われるが、この男の声は茅宥よりもセクシーさがあった。
この顔で迫られてこの顔で囁かれたら女は腰抜けるだろうな、などと考えてしまう。
はっと、そんなこと考えている場合じゃないと考え直す。
「じゃあうちの人気商品でも・・・。」
そう言って取りに行こうとしたら腕をガシッと掴まれた。
「なっ!?」
抵抗しようとしたがあまりの強さに僅かにしか動かなかった。
さらには訴えかけるような目で見つめられる。
「今晩ここで待ってる。」
そういって差し出されたのは名刺だった。
名前を書かれた裏には地図のようなものが書かれていた。
場所名、お店の名前もしっかり記載されている。
「これって・・・」
どういうことですか?と続ける前に男が目の前からいなくなっているのに気づいた。
「奢れっていうことなのか?」
茅宥は一人ごちた。
一個人の問題じゃないはずなのだが悪い噂を流されでもしたらと考えると安易に断れない。
一人じゃ考えきれないと園長に相談に向かった。
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